Building on the satellite observations and GCM results described in the GRL paper, we are planning a research cruise to the eastern equatoiral Pacific to directly observe these quasi-monthly ocean-atmospheric waves. For more information, contact XIE@ees.hokudai.ac.jp

短周期大気海洋結合波動の直接観測

目的

 東部赤道太平洋はエルニーニョの発生域、二酸化炭素の最大の自然ソース、また海洋生産の高い領域として知られ、気候学・海洋学研究の謎に満ちている。湧昇に冷された赤道と北緯10度の間、強い海面水温フロントが形成されている。赤道海流系の力学不安定によって、毎年7-11月にこの海面水温フロントが大きく南北蛇行する(波長1千キロ、周期1ヶ月)。最近この海面水温波動が海上風に影響することが示唆され、北海道大学のグループは世界で初めて衛星データと数値モデル結果からこの大気海洋波動の水平構造を捉えた(Xie et al. 1998, GRL)。エルニーニョのような低周波数大気海洋結合波動がよく観測されているが、1年以下の短周期のものはこれが初めてである。

 しかし衛星では海面付近しか観測できず、しかも東部北赤道太平洋に島もなく、波動の鉛直構造の直接観測は非常に困難である。海洋調査船による直接観測を実施し、上記の大気海洋結合波動の3次元構造を解明することは本研究の目的である。東部赤道太平洋は大気観測の真空地域であり、この観測はしっかりした理論予測に基づいており、新しい自然現象の発見に繋がる可能性が極めて高い。

 この波動は物理量のみならず、化学物質循環にも強く影響する。東部赤道太平洋では、大気境界層が非常に安定しており、境界層内外で大気微量成分に大きな濃度差が維持されている。上記の大気波動に伴う鉛直流と混合によって、各種の化学物質およびその反応条件が大きく変化することが予想される。それらの時空間変化を観測すれば、オゾン破壊反応や雲凝結核になるDMS(Dimenthyl Sulfide)酸化反応といった大気化学・雲物理学過程の解明に大きく役立つ。

内容

 水産庁遠洋水産研究所は、東部熱帯太平洋・大西洋のマグロ資源調査を定期的に実施しており、1999年秋には大西洋のマグロ調査を同庁調査船「照洋丸」を使用して実施することになっている。この機会をとらえ、同研究所低緯度域海洋研究室(担当:渡邊主任研究官)と共同研究を組み、往航時に東部熱帯太平洋の横断観測を実施することが可能になった。